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作業工程



 

2000年から、ネパールからアロー(刺草・イラクサ)の糸とヘンプ(大麻)の糸を仕入れ、自分で染めて織りはじめました。アローの糸は日本で他に織りに使っている人を知らなかったため、自分なりに試行錯誤右往左往しつつ、作業手順を確立してきました。

現時点での自分の手法がベスト、というわけではなくこれからも変化していくと思いますが、いったんここでまとめたいと思います。(2008.11)

アロー糸、ヘンプ糸については→about yarnのページをご覧ください。
糸はウェブショップでも販売しています→web shop Cocoon


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<1>糸の選別 <2>糸の精錬 <3>呉汁による下処理

<4>糸染め <5>織り <6>仕上げ



<1>糸の選別


アロー糸もヘンプ糸も送られてきたカセや玉は太さ、撚りの具合、色味の違うものが混ざっています。 まずは糸の選別をしてカセを巻き直し、糸の結び目が出て来たら機結び*(はたむすび)に結び直します。

*機結び:結び目が小さくてめだたず、切った糸の端ではなく元の糸を両側に引っ張ると結び目が締まる結び方。

<2>糸の精錬

精錬にはネパール産のソープナッツを使っています。糸の汚れ具合にもよります が、だいたい糸量の10%前後のソープナッツを使用します。
ソープナッツはネパールではリタ、日本ではムクロジと呼ばれます。 果皮に天然のサポニン成分が多く含まれており、お湯や水に果皮を入れてよく振ると細かい泡が立ち、 天然の石けんとして使用出来ます。ネパールでは洗濯用や体や髪を洗う石けんとして古くから使われていたようです。 →ソープナッツはウェブショップでも販売しています


■アロー糸を精錬する

1) ソープナッツを用意します。(だいたい糸の重量の1割程度)
2) ソープナッツの汚れをざっと洗い流してから布袋などに入れて縛ります。
3) 袋に入れたソープナッツを水に入れてかき混ぜ、泡立てます。
4) 乾いた糸を入れて暫く置いて糸と溶液をなじませてから火にかけます。
5) 沸騰後、糸を繰り汚れの落ち具合を見ながら1時間前後煮ます。
6) 汚れが落ちたら、糸を水洗、脱水して干して乾燥させます。



<3>呉汁による下処理


アロー、ヘンプ共に綿よりは染まり易いですが、絹やウールに比べると染色性は劣るので、濃い色を染めたい場合は呉汁で下処理をします。 玉葱の皮やカテキュー、ミロバランなどタンニン分が多く含まれるもので染める場合、また藍染めの場合は呉汁処理はしていません。


■アロー糸1kgを呉汁で下処理する

1) 糸量の3割、300gの大豆を3リットルの水に一晩浸します。
2) 1)をミキサーにかけます。
3) 木綿の袋に2)を入れてよく絞ります。これが呉汁です。   
4) 呉汁に糸をつけ込み、糸の中まで呉汁をよく浸透させます。
5) 糸をよく絞り、さばいて、日に干して乾かします。
6) 糸が乾いたら4)の呉汁の残りに再度つけ込みます。
7) 糸をよく絞ってさばいて乾燥させます。
8) 1ヶ月程度干して枯らしてから染めます。

(ヘンプ糸も同様)


<4>糸染め

糸染めには主にインド茜ラックダイカテキューエキスミロバラン、 玉葱皮、フクギ、琉球藍などの天然染料を使っています(各染料名をクリックすると各染料の販売と染め方、色見本のページに行かれます)。 媒染剤はネパール産の天然みょうばん、木酢鉄など。

琉球藍を除いて他のものは基本的に染め方は同じです。ここでは一例としてラックダイでの染めの方法と琉球藍の発酵建てについて説明します。


■ラックダイでアロー糸を染める

ラックダイとはハナモツヤクノキやイヌナツメなどの樹に寄生するラック虫(介殻虫)が分泌する樹脂のこと。 古くから染料や薬として有用されており正倉院に保存されている紫鉱はこのラックのことだそうです。 ラックダイは現在も食用色素として広く使われています。また色素や夾雑物を取った後の樹脂はシュラックとして封蝋や塗装など様々な用途に使われています。


【染液を取る】

1) 濃色の臙脂色を染める場合、糸重量の3〜5倍のラックダイを使います。 ゴミなど不純物を取り除き、乳鉢などですりつぶして粉状にしておきます。
2) 1)を布袋に入れて口をしっかりしばり、水に浸します。鍋底にくっつかない様に、布袋を吊るしておくと作業がしやすい。 (樹脂分が溶け出し、鍋にこびりついてしまうと洗うのが大変です)
3)染料に水がしっかり浸透してきたら火にかけ、染液を作ります。徐々に温度を上げ、沸騰してから30分〜1時間程度煮ます。 その後いったんさましてから再度火にかけます。ラックは色がよく出るので、水を足しながら煮詰めていきます。 様子を見ながら煮出します。
4)充分色が出たら、染液を布で漉して冷ましておきます。


【糸を染める】

5) 呉汁で下処理した糸を30分〜1時間程お湯で煮て、脱水しよくさばきます。
6) 5)の糸を室温まで下がった4)の染液に入れ糸を繰りながら徐々に温度を上げます。
7) 染液が沸騰したら、30〜40分程ムラにならないよう、糸を繰りながら染めます。
8) 火を止め、糸を入れたまま冷めるまでそのまま放冷します
9) 糸を染液から取り出し、絞ってからかるく水洗、脱水し、よくさばきます。
10) 天然みょうばん(糸重量約10%程度)を少量の熱湯でよく溶かした後、糸重量の20〜30倍の水に混ぜ、媒染液を作ります。
11) 10)に9)の糸を30分程漬込み、媒染します。
12)  糸を媒染液から取り出して水洗し、脱水し、糸をさばきます。
13)  糸を再度6)〜8)の要領で染めます。
14)  糸をよく洗い、脱水し、さばいて日に干して乾燥させます。 求める濃度になるまで、6)〜14)の工程を繰り返します。

ラックダイ染め糸
アロー糸 ラックダイ染め
   

■琉球藍で染める

琉球藍はキツネノマゴ科の植物で、マメ科のインド藍や日本のタデ科の蓼藍とは異なる種類の植物です。 琉球藍は蓼藍のすくもとは違い、伝統的に「泥藍」にして染めます。
泥藍の製造方法はこちらをご覧ください→やまあい工房の泥藍製造
(私は沖縄県本島名護市のやまあい工房さんの泥藍を使用しています)

【琉球藍の発酵建て】

 泥藍に含まれる「インジゴ」と呼ばれる藍の色素は不溶性なのでそのままの状態では染まりません。 インジゴを還元して水溶性のロイコインジゴに化学変化させて染色出来るようにします。この作業を「藍を建てる」といいます。 現在は化学的にハイドロサルファイトを使って藍を建てることが可能ですが、私は昔ながらの発酵による藍建てを行っています。


1)泥藍と水を入れ、よく撹拌します。一晩程度置いて液が分離するようだったら上澄み(あく)だけ取り除きます。分離の程度が少なくなるまでこれを数日繰り返します。
2)泡盛、水飴(蜂蜜)(泡盛または水でよく溶いておく)を適量加えます。
  しっかりと還元して藍が建つまで1日2度、朝と夕に撹拌します。
3)夏場であれば2、3日すると建ち始め、1週間程度で染められるようになります。充分に藍が建つと,液の表面に油膜状のものがかかり、紫がかった藍の華(泡)が立ちます。 溶液の色は黄緑色です。充分に建ったら、様子をみながら、撹拌の頻度は少なくします。


藍の華
  藍建ての様子 泡状のものが藍の華

4)温度は25度前後、PHはだいたい10.0〜11.9程度に保ちます。藍の様子をみながら、木灰の上澄みで作った強アルカリの灰汁や、手に入らない場合は苛性ソーダなどを入れます。  藍の勢いがなく、疲れていると思われたら、水飴(蜂蜜)、泡盛を適量加えて休ませます。


【琉球藍での糸染め(濃色)】

 十分に建った藍の溶液の中には水溶性のロイコインジゴが含まれます。ロイコインジゴが糸や布の繊維に付着した後、空気中の酸素により酸化してインジゴ(青色)に戻ることで、青く染めることが出来ます。

1)精錬済みの糸のカセをお湯に浸けてからよく絞り、捌いて棒に通しておきます。
2)藍の華はそっと別の容器にのけておきます。(染め終わったらまた戻します)
3)棒に通した糸を藍の溶液に静かに入れ、何度かそっと上下を返してから5〜10分そのまま浸して置きます。
4)糸を絞りよく捌いて酸化させます。溶液から出した時には緑色だった糸が酸化するに従って青色に発色していきます。
5)3)〜4)を2〜4回程度繰り返し、いったん日陰で中干しして十分酸化させます。
6)ぬるま湯での洗い、脱水を数回繰り返してから酢酸または米酢の入った水に30分程度浸し、再度洗い脱水し、カセを整えて一晩水に浸しておきます。
7)糸を脱水し、よく捌いてから日に干して乾かします。
8)求める色になるまで3)〜7)を繰り返します。だいたい4,5回から黒に近い濃色だと20回程度繰り返します。
9)最後にソーピング剤で洗い、よく水洗して乾燥させます。

  

<5>織り


使用している織機は4枚綜絖ロクロ式の高機で東京都八王子市の大忠木工所さんのものです。 以前は8枚綜絖の洋機(アシュフォード社のジャックルーム)を使っていましたが、帯を織るようになり、緯糸の打ち込みなどに不都合が出て来たため、上記の和機に替えています。 アロー、ヘンプ共に経糸、緯糸どちらも糊付はしていません。また、絹や綿、ウールなど他の素材も混ぜて使うこともあります。


■織りの工程

1)デザインを起こします。糸の種類、太さ、色、織りの組織、本数等々を決めて設計図を作ります。
2)経糸を準備します。必要な糸量を計算し、木の管に巻きます。
3)経糸を整経(せいけい)します。
4)整経した経糸を機に巻き取り、綜絖通し、筬通しをして試し織りを始めます。
5)試織は湯通しをしてアイロンをかけてみて、出来上がりを確かめます。
6)緯糸を必要量準備して、本織りに入ります

アローもヘンプも単糸で糊付をしていないので、乱暴に扱うと糸が切れ易くなります。 経糸はこまめに毛羽を取り、糸に大きい結び目がある場合は最初から機結びに結び直しておきます。 緯糸も筬を打った時に切れることがあるので、よく見ながら織り進みます。 




<6>仕上げ

 織り上がったら、必要に応じて布端の処理(かがる、フリンジを作る、など)をしてから湯通しをし、汚れなどを綺麗に落とします。 その後軽く脱水して干して乾燥させます。布が7、8割方が乾いたら、布をバイヤス方向に手で引っ張り、 反対方向からもまたバイヤス方向にひっぱります。そして蒸気アイロンをかけ、布目を整えて完成です。



作業中も常に観察をし、よりベストな方向に持っていけるように対応し続けて行くことを目指していますが 実践は大変に難しいです。今後もこのページは加筆訂正をしていくつもりです。







創作の姿勢、また染めの技法について
    dye works Fogliaの仁平幸春氏に
多くを教えて頂きました




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